去る人もいれば、再会もあります。
歩いていたら、駈けよって抱きついてきたこの子・・・マリアです。
もう、15年も前、ティンエイジャーのカップルが抱いていた黒い小犬・・・それが我が家の飼い犬、ウォータードッグのアトゥンでした。
いつも笑顔の幸せそうなマリアの顔が曇りだしたのは、ボーイフレンドのパウロが悪い仲間に入った頃からです。麻薬の売人をやっていたパウロが、取引のため夜中の海にでたまま帰ってこなかったのは十年ほども前のことで、以来マリアも姿を消しました。
そして・・・遠い町で結婚し、子供を連れて戻ってきました。
「どう・・・」と聞くと「まぁ、まぁ・・・」といって、坊やを抱きしめました。
それにしても濃い顔です。これが正真正銘ポルトガル女の顔です。
港を歩いていたら・・・あら・・・。
あら・・・もしかして・・・でも、立派な首輪・・・ありえない・・・。
ジョアキン?・・・こうして、港のガードマンとして一帯を仕切っていました。もう三か月も姿を見かけず、誰もが死んだと思っていました。
ジョアキンです・・・しかし、返事をしません。ちょっと、お澄まし・・・誰かに飼われているようで、顔の表情が“甘えん坊”に変わっています。よしよし・・・幸せならば、それでよし・・・。
すっかり涼しくなって“傾いたおじさん”も復活・・・南ポルトガルの漁師町は、なにも変わりません。