なんて可愛らしいのでしょう・・・こんなコ、見なくなりました・・・九條さんです。
「寺山修司のラブレター」が、一周忌に間に合い、いただきました。九條さんとの共著です。
可愛らしい表紙のデザインは、増田セバスチャン。九條さんのお気に入りの遺品を集めた、誠にチャーミングな本です。
遺品のノートには、お別れの言葉が記されていたそうです。九條さんらしい簡素な言葉で・・・
SKDのトップダンサーから、銀幕の青春スターに・・・
大それた恋をした、野心溢れる田舎出の青年・・・二人は恋に落ちました。
毎日のように書かれた手紙には、気に入った漫画を張り付けたり・・・「KASABUTAを掻かないように・・・」などと、細やかな愛情が溢れています。
「君を可愛いと思った・・・」帰ってくると、寝た振りをしていた恋人を、可愛いと思う・・・映画のワンシーンのようです。そして、5年後の自分たちは、一体なにをしているだろうか・・・と、思いを巡らせています。その5年後・・・劇団「天井桟敷」が作られたのでした。
最初の頃のラブレターには、仕事で京都などに出かけている九條さんに「早く帰っておいでよ・・・」と、たびたび書いています。二人が最後に交わした会話もまた「早く帰っておいでよ・・・」でした。
この本は、寺山修司の傑作恋愛小説だと思います。余計な解説がないのも好ましい。映子のために・・・と題された短歌もまた素晴らしいのです。いつもとは違い、タネも仕掛けもない、素直で美しい言葉を使っています。劇団設立当時の二人しか知らない私にとって、二人の関係は常にピリピリとしていたように思います。寺山さんが九條さんに当たり散らすこともたびたびで・・・しかし、このような始まりがあったからこそ、そして、九條さんが彼の才能を認めていたからこそ、亡くなってから30年も支えてくることが出来たのでしょう。いい本です。