ポルトガルの南、アルガルベ地方が最も美しい季節は春。一月の終わりにアーモンドが咲き、草原に最初に現れるのがサンタノイテ。あたりは柔らかいレモンイエローに埋めつくされる。
その中に目を凝らすと、ピンクのアザミ、ブルーの松虫草、濃い紫のムスカリ、白いラベンダー、真っ赤なひなげしなどが風に揺れている。花たちは競い合うように咲き続け、一週間ごとに草原は色を変えるのである。
アルガルベの花の植物図鑑を作りたいと始めたスケッチは、十年を過ぎても30種類ほどしかできていない。あまりの美しさに、眺めてため息をついているうちに、花の季節が終わってしまうからである
。