ある日曜日、当てもなくドライブしていたら、不思議なおじいさんに出会った。いかにもよそゆきらしいスーツはだぶだぶで、その色はあたりの草原の色よりなお濃い鮮やかな緑色、ネクタイは色あせた淡いピンク、しかも美しい花束を抱えている。なんだろう?私たちは車を止め彼をに見入った。車の中から手を振ると、おじいさんはごく当たり前の顔をして、ひしゃげたソフト帽をちょいと持ち上げニッと笑った。歯はあらかた抜けており、残ったそれはタバコのヤニで真っ黒。驚いたことに、そんなおじいさんはひとりではなかった。車を進めると正装し花束を抱えたおじいさん、おじさん、青少年があちこちの草むらから現れたのである。これはイースターに行われる祭りのひとつで、私たちは“男の花祭り”と呼んで毎年楽しみにしている。しかし、ここ数年、観光化され、商店主や勤め人などの参加者が増え、緑のスーツも欠けた歯も見かけなくなったのが、
誠に残念である。